都会の雑踏を歩いていると、ふとした瞬間に強烈な開放感に包まれることがあります。数え切れないほどの人間が行き交う中で、自分を知っている人が誰もいないという状況だからです。地方にいた頃は、スーパーへ行けば高確率で知り合いに遭遇するため、服装や振る舞いを無意識に気にしていました。しかし、ここではどんな格好をしていても、何を食べていても、周囲から干渉されることがありません。この匿名性の高さが生む気楽さは、地方からの移住者が最初に感じる恩恵であり、自分自身を型にはめずにいられる心地よさを味わわせてくれます。
しかし、その自由の反面、ふとした瞬間に忍び寄る寂しさも隣り合わせになっています。クリスマスの華やかなイルミネーションの下や、活気にあふれる駅のホームで、大勢の楽しそうな笑い声に囲まれながらも、自分だけが透明人間になったかのような感覚に陥ることがあります。他人に興味を持たれない自由が、誰からも必要とされていないのではないかという孤独感に容易に反転してしまうのです。街の明かりが明るければ明るいほど、自分の部屋に戻った時の静寂が際立ち、遠く離れた故郷の温かなつながりを恋しく思う夜もあります。
今では、都会特有の孤独感は、決して悪いものではないと思うようになりました。この孤独があるからこそ、自分の内面と深く向き合う時間が生まれ、他人の目を気にせずに本当にやりたいことが鮮明になっているからです。無干渉な冷たさの中にある自由を謳歌し、寂しさを糧にして自立した人間になっていく過程は、都会で暮らす醍醐味といえるのではないでしょうか。